Coaching 真に効果的な練習をするための8つのヒント

ギャノン・ベイカーのクリニック

真に効果的な練習をするための

8つのヒント

Gannon Baker Clinic

1

「異常」な状況を作り出す

abnormality

1つのゴールに対して左右の両サイドからドライブし、フローターシュートでフィニッシュするドリルがありました。左右のスタートする順番やタイミングは特に気にせず、それぞれがドリルをスタートするため、センターラインからドライブするときに左右からバッティングするような状況が発生します。このような場合には試合中にも想定されるため、子どもたちの判断によってドリブルでステップバックし、再度アタックするように指導していました。

2

「失敗」をさせる

mistake

午前のクリニックの終わりにアシスタントのディロンからコメントがありました。

自分のコンフォートゾーンから出て、失敗してでもチャレンジしようとしていた子どもは、紫のシャツを着た1人と、黒のシャツを着た1人だけしかいなかった。コンフォートゾーンから出てチャレンジしなければステップアップすることはできないよ。

そして午後のクリニックの途中では、ギャノンから同じ内容のことがかなり厳しい口調で語られました。

「コーチと写真を撮って満足か?一生懸命やらないというのは、コーチへのリスペクトが足りないということだ。コーチにとっても時間の無駄だ」

「失敗してもいいから、試合でも使えるレベルを目指すために少しでも強いドリブル、強いパス、しっかりしたフェイク、素早いステップをやっているか?」

それが響いたのか、子どもたちは以降のドリルは目の色を変えて行っていました。

3

「情熱」を伝える

enthusiasm

これは恐らく、最もクリニックの中で強調されていたことでしょう。選手を前向きに、やる気にさせるのはコーチの情熱です。同時にコーチだけではなく選手自身の情熱でもあります。

クリニックの最初にギャノンが教えたのはハイタッチとバンプ(ジャンプして体をぶつけあう)でした。ドリルがうまくいけば声を出してハイタッチ! 難しいスキルをやり遂げたらバンプ! 勝つチームほどハイタッチは多いし、選手たちの声で騒がしくない体育館ではすごい練習はできません。厳しい練習が終わればみんなで声を出して祝福し、励ましあい、讃えあうことで次の練習のための自信がつきます。

ギャノンはレブロン・ジェームス、ケビン・デュラント、クリス・ポールの3人だけの特別なワークアウトに参加したことがあるのですが、3人しかいないとはとても思えないくらい大きな声が絶え間なく出ており、それぞれをモチベートし合いながら練習をしていたそうです。

当初ハイタッチを控えめにやっていた子どもたちも、午後の部に入るころには笑顔を見せながら自然にハイタッチをしていました。自分たちなりのハイタッチのやり方を見つけて楽しんでいる子どもたちもいて、子どもたちの順応性の高さに驚きました。

4

試合の「準備」をさせる

prepare

ギャノンのドリルは「練習のための練習」にならないように工夫がされていました。ドリブルからフローターのドリルではコーチがコーンの後ろに立ち、左右どちらかに飛び出すので、それを子どもたちはクロスオーバーでかわします。するともう1人のコーチがヘルプとして出てくるのでさらにクロスオーバーでかわします。かなり難しいのですが、このような状況を練習から体験していれば、試合においても慌てることなく対処できることでしょう。

さらにギャノンは自分がコーチとしてディフェンスに入った場合は、クロスオーバーで抜こうとする子どもたちから容赦なくボールをカットしていました。これは試合でのディフェンスのレベルとそれを抜くためのドリブルスキルのレベルを身をもって体験させていたのだと考えられます。

また試合のための準備はスキル面だけではなくメンタル面でも必要です。ギャノンは練習の説明をあえて早口で行うことで、試合中にコーチからの指示が早口で行われた場合へのメンタル面での備えもさせていました。
5

「上達」することを重視する

improve

クリニックの中でテニスボールを上に投げ、落ちてくるまでの間にダブルクロスオーバーをするというドリルがありました。13歳の子どもがこれを成功させていたのですが、ギャノンはその子を指して言いました。

「自分(ギャノン)がプロだから出来るドリルだなんて思わないでほしい。トルコ、中東、中国、日本とアジア4か国回ってきたが、13歳でこのスキルをできたのはこの子が初めてだ。この子だってプロになるチャンスがある」

場所・環境に関係なく上達するチャンスはあるし、競うべきはライバルではなく自分自身です。

G.B.E.D — Get Better Every Day(毎日上達しよう)
6

選手に「責任」を負わせる

responsible

ドリブル〜フローターの練習では待ち時間が発生します。ギャノンはこの待ち時間に言いました。

ただ待っていてもうまくならない。待ち時間にはドリブル練習をしろ

限られた時間を有効に使うのは選手の責任であり、待ち時間にも練習をして、自分の成長に自分で責任を取る姿勢の必要性を説いていたのだと思います。ドリブル練習をする子どもや、できなかったスキル・プレーの確認を仲間としている子どもがいましたが、残念ながら大半の子どもたちは何もせず待っていたように思います。

多くの場合、練習において時間が一番の制約ですが、それを言い訳にせず自分の責任で時間を有効活用し、自分の成長に自分で責任を持つことをギャノンは体現していました。

7

「忍耐強く」あれ

patience

自分にできることができないことで、簡単に諦めたり、見限ったりしないでほしいと思います。それはまた自分自身に対しても同様です。

クリニック全体をサポートしてくれたエルトラックのコーチ陣は、コーチとしての素晴しい見本を見せてくれました。ギャノンの説明を真摯に聞き、100人を超える子どもたちに対して、失敗する子どもをフォローしながら粘り強く子どもたちにドリルを実施させていました。エルトラックのコーチがドリルのデモを担当するときには、難しいスキルに一度や二度は失敗しながらも忍耐強くやり遂げ、最後にはギャノンとバンプで祝福するという情熱を見せてくれました。

ギャノンもクリニックの最後で「30か国以上クリニックをやってきたが、その中でもベストのコーチ陣だ」と最上級の褒め言葉を送っていました。
8

人生の「土台」を作る

basis

次の言葉は練習の最後にアシスタントのディロンが総括として子どもたちに伝えたことです。

君たち13〜15歳の年代は一番大切な時期だ。なぜならこの時期の習慣が一生の習慣を決めるからだ。最後の1つのドリルを諦めて今日やるべきことを先送りすると、この先諦めてしまう習慣を作ることになる。毎日その日の練習に全力を尽くしたか、自分で評価(Self-Evaluate)してほしい

ギャノンがコービー・ブライアントとランチしているときに「偉大さとは何か?(What’s greatness?)」をコービーに聞いたところ、こう答えたそうです。

「とてもシンプルだ。その日やるべきことを毎日一生懸命やるだけだ。(Do what you do, work hard every day)」

その日やるべきことを毎日着実にこなしていくことがバスケットボールの上達につながりますし、人生においても物事を積み上げるための大切な土台となることを改めて知らされました。

練習を一生懸命やることと楽しむことと成長のサイクル

上記8つのヒントのほかにギャノンがクリニックの中で何度も何度も口にしていたのは「一生懸命やること(work hard)」と「楽しむこと(fun)」です。

練習は、個人スキルであれば1つのドリルが1分弱、列を作って行うドリルでも2分〜4分で行われ、次から次へと新しいドリルが紹介され、理解することもドリルを実行することも高い集中力が必要とされるハードなものでした。

午前中の練習の最後にはレブロン・ジェームスがやっている「8分間足を一回も地面につけない体幹トレーニング」も行われました(時間は4分間に短縮)。練習の最後で一番体がきつい時間帯ですが、ギャノンは言いました。

「体にはきついが痛さで死ぬことはない。これをやりきる意思(Head)と心(Heart)が必要だ

一方で厳しいドリルをひたすらやるだけではなく、ドリルを楽しむ方法も同時にギャノンは提案していました。成功数を数えさせ競争心に火をつけたり、高得点者にシューズやTシャツをプレゼントするチャレンジのチャンスを与えたり、音楽をかけながらドリルをしたりと子どもたちがドリルを楽しめるように仕掛けていました。

成長のサイクル

熱意を持って(enthusiasm)

練習を一生懸命楽しみながらやり(work hard & have fun)

上達し(improve)

自分とチームメイトのモチベーションを高める(motivate)

このサイクルにうまく入れるように子どもたちを動機付け、メニューを組んでいくことが、子どもたちのバスケットボールにおける成長を促す重要なコーチの役割である——ということを、ギャノンは圧倒的な熱意と卓越した技術で示し、日本の参加者に強烈なメッセージとして残していったのではないでしょうか。

Get Better Every Day

毎日上達しよう!
Do what you do, work hard every day.

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